名詞の6セグメントによる分類
名詞に関する大まかな注意点は単語解説ページの冒頭でまとめていますが、本来、名詞はその語義(Sense)によって文法的な振る舞いが異なります。
各語義に付与されている [XX-XX-XX-XX-XX-XX] 形式のコードは、その語義における「振る舞いの設計図」を示しています。
属性コードの構成例
[DP-AC-FC-LC-ST-CO]英語定義の項目に併記されるこのコードは、名詞の各セグメント(限定詞の選択、可算性の度合い、複数形の綴り規則など)から選択された識別子を連結したものです。これにより、辞書的な意味を超えた「文法的な振る舞い」を一目で判別することが可能になります。
Segment 1: 限定詞の分類(Determiner Type)
名詞が文脈の中でどのような限定詞(冠詞や所有格など)を伴う傾向が強いかを分類しています。
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【FT】固定の定冠詞 (Fixed-The)
あらゆる文脈において定冠詞「the」を伴うことが義務的である名詞です。唯一無二の存在や、慣習的に固定されているものを指します。
例:the sun, the Earth -
【MT】原則として定冠詞 (Mostly-The)
特定の状況下で概念的に「一つ」と特定される性質が強い名詞です。通常は「the」を伴いますが、文法的には数えられる名詞(可算名詞)としての性質も保持しています。
例:the center, the sky -
【PO】所有格優先 (Possessive-Oriented)
体の一部や親族関係など、不定冠詞(a)や定冠詞(the)よりも、所有格(my, your等)を伴って表現するのが最も自然なグループです。
例:my hand, your heart, his wife -
【DP】文脈依存 (Dependent)
デフォルトのカテゴリーです。冠詞の選択は、その時の文脈や他の属性(複数形かどうか等)に依存します。可算・不可算の両方を含みます。
例:book, water
Segment 2: 数と可算性の分類(Plurality)
名詞が単数・複数のどちらで扱われるか、また計数可能かどうかの性質を分類しています。
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【AS】常時単数 (Always-Singular)
常に単数形として扱われ、複数形を持たない名詞(不可算名詞)です。※制約:限定詞分類が「MT」の場合は使用できず、その際はACまたはMXを選択します。
例:news, advice, furniture -
【AP】常時複数 (Always-Plural)
常に複数形として扱われる、あるいは集合的に複数の存在を指す名詞です。
例:people, scissors, police -
【AC】常時可算 (Always-Countable)
常に「1つ、2つ」と数えることができる名詞です。単数形と複数形の区別が明確です。
例:book, apple, dog -
【MX】混合型 (Mixed-Complex)
文脈によって可算名詞(個体)としても不可算名詞(物質・抽象概念)としても扱われる、性質が複合的な名詞です。
例:cake, water, stone, onion
Segment 3: 性質と可算資格(Nature)
名詞が本来持っている「数えやすさ」の度合いに基づき、その傾向を分類しています。
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【FU】固定不可算 (Fixed Uncountable)
計数対象外の領域にある名詞です。常に単数(AS)として扱われる概念などがここに分類されます。
例:advice, information, furniture -
【MU】原則不可算 (Mostly Uncountable)
液体や気体など、基本的には数えませんが、種類や容器単位で稀に可算化される性質です。
例:water, air, coffee -
【LU】不可算寄り (Leaning Uncountable)
不可算としての利用が一般的ですが、切り分けられた個体として意識されることもあるグループです。
例:cheese, wood, meat -
【BD】均衡型 (Balanced Dual)
可算・不可算のどちらの性質もバランス良く持ち合わせ、素材か個体かで柔軟に使い分けられます。
例:stone, paper, glass -
【LC】可算寄り (Leaning Countable)
基本的には単位(1個、1枚)で数えることが多く、不可算的な表現は部分を指す場合に限定されます。
例:cake, pizza, chicken -
【MC】原則可算 (Mostly Countable)
ほとんどのケースで1つ、2つと数えられますが、調理後や素材として扱う際に不可算の余地を残しています。
例:onion, egg, apple -
【FC】固定可算 (Fixed Countable)
完全に計数領域にある名詞です。常時可算(AC)や常時複数(AP)の名詞がここに分類されます。
例:book, dog, people
Segment 4: 大文字・小文字の分類(Capitalization)
文頭以外の通常の文脈において、名詞を大文字で書き始めるか、小文字のままにするかを分類しています。
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【LC】小文字表記 (Lower Case)
一般的な事物、物質、学問名など、通常の文章中で小文字から書き始める名詞(普通名詞)です。
例:apple, water, physics -
【UC】大文字表記 (Upper Case)
特定の地名、曜日、天体名など、常に一文字目を大文字で書き始める名詞(固有名詞)です。
例:London, Friday, Mars
Segment 5: 複数形形成・綴りの規則(Spelling)
複数形にする際の綴りの変化、あるいは単複同形・不変といった語形の性質を分類しています。
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【ST】標準変化 (+s)
語末に「s」を付ける最も一般的な変化です。常に複数形で使われる名詞(pants等)の構成原理もここに含まれます。
例:books, roofs, scissors, pants -
【ES】拡張変化 (+es)
語末が s, x, ch, sh, o などで終わる場合に「es」を付ける変化です。
例:boxes, churches, tomatoes, glasses, clothes -
【YI】yをiに変えてes (-ies)
語末の「子音+y」を「ies」に変える変化です。
例:cities, batteries -
【FV】f/feをvに変えてes (-ves)
語末の「f」または「fe」を「ves」に変える変化です。
例:leaves, knives -
【LT】古典言語由来 (Latin/Greek)
ラテン語やギリシャ語の規則に基づき、語末が -is→-es や -on→-a などに変化するものです。
例:analyses, phenomena -
【CP】複合語変化 (Compound)
複合語において、中心となる名詞部分を複数形にするタイプです。
例:passers-by -
【SA】不変・同形 (Same/Static)
単数と複数が同じ形(単複同形)のもの、複数形を持たない不可算名詞、および大文字で始まる固有名詞がこのグループに固定されます。
例:sheep, fish, news, advice, London, Friday -
【IR】不規則変化 (Irregular)
語の中の母音が変化したり、語尾に「en」が付くなど、独自の綴り変化を持つものです。
例:children, men, feet, mice
Segment 6: 動詞の一致(Agreement)
主語となる名詞が、動詞(is/are, has/haveなど)の単数形・複数形のどちらを要求するかを分類しています。
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【DP】文脈・属性依存 (Dependent)
デフォルトのカテゴリーです。この名詞が単数として扱われるか複数として扱われるかは、他の属性([C]大文字表記の有無や、[P]数・可算性のステータス)に直接依存します。通常の可算名詞であれば「a book is / books are」、不可算名詞であれば「water is」という規則に従います。
例:book, water, London -
【CO】集合的一致の二重性 (Collective Dual)
単数形のままでも、文脈や地域(主にイギリス英語)によって「単数扱い(is)」と「複数扱い(are)」の両方が可能になる名詞です。その集合を「一つのまとまり」として見る場合は単数扱い、構成している「個々のメンバー」に焦点を当てる場合は複数扱いとなります。この属性を持つ名詞は、イギリス英語において、あるいは文脈上でメンバーの動きを強調したい場合に、単数形のままで複数動詞を伴うことができる性質を持っています。
例:family, team, staff, committee, government